隅っこ

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この家は、3年前に父が爪に火を灯すような思いで建てた、念願のマイホームだ。 完成したマイホームを家族4人で見上げた時、父は感極まって涙を流した。 そして遂に入居を果たした時には、誰よりもはしゃいで家中を駆け回っていた。 母さん、母さん どうだいこのキッチン! 使いやすそうだろう! これからもウマい飯を頼むよ! アキコ お前の望んでいた、広くてキレイなお風呂だぞ! 冬でもちっとも寒くないし、床の水ハケが素晴らしいんだ! 一番風呂はアキコのモンだぞ! ノブヒロ! 遂にお前の部屋が出来たな! そうか嬉しいか! 友達いっぱい呼んで自慢してやれ! 私たちは子供のようにはしゃぐ父を、微笑ましく見守っていた。 その時の事を思い出して吹き出す私に、父は「またアレ思い出してるな」と照れ笑いを浮かべた。 「まぁ、とにかく貼り付けておくか」 ポケットからアロンアルファを取り出した父にギョッとして、まさかそれで貼り付けるの?と聞く。 「アロンアルファは何でもくっつけるスグレモノだ」 父は真面目な顔でそう言うと壁紙を貼り付け直した。 …まぁ、くっつけば何でもいいけど。
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