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私はキツネにつままれたような気になったが、すぐにお母さんの仕業だな、と気付いた。
私を驚かせようと思ったに違いない。
急いで1階に戻ると、お母さんたらぁ、と声をかける。
「何?何の事?」
「またまたとぼけちゃって!お母さん以外いないじゃない」
「だから、何が??」
私が事の次第を話すと、母はそんな事してないと否定した。
「えぇ?だって、他に誰がいるのよ」
「そんな事言われても、やってないモンはやってないし」
「…本当にやってないの?」
「やってないってば。アキコ、あなたの見間違いだったんじゃないの?」
そんなハズはない。
私はもう一度部屋へ向かい、問題の箇所の下にあるラックを調べた。
ラックが動かされた形跡が無い。
いくらお母さんが私を騙そうと慎重に動かしたとしても、その痕跡を完全に消し去る事は不可能だ。
そしてラックを動かさない限り、壁紙を貼りつけ直す事は出来ない。
私は壁紙がめくれていたハズの左隅を呆然と見つめた。
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