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「うぅ…怜はひどいよ…頭がちょっと大変なことになったよ…。」
朝食を摂っていると、美雪は怜にじっとりした視線を向けた。
「もっと色んな起こし方があったんだけど、あれが1番即効性がありそうだったんでな。」
「そんなことを言ってるんじゃないのに…。」
ため息をつきながら怜を見ると、志乃がニッコリ笑いながら言った。
「二人とも、昔とあんまり変わってないのね。」
「そう?」
「えぇ。なんか、すっごく懐かしくなっちゃった。」
志乃は目を細め、昔を思い返しているようだ。
「あ、そうだ。美雪、今日って暇か?」
「うん。特に予定はないけど…どうしたの?」
「もし大丈夫なら、街を案内してもらいたくてな。」
「分かったよ。じゃあ、朝ごはん食べたら着替えるね。」
美雪はパンをくわえてニッコリ笑った。
「お待たせ~。準備出来たよ~。」
「おっ、じゃあ行くか。」
テレビの血液型占いのコーナーを見ていた怜は立ち上がってコートを羽織った。
「マフラーはつけないの?」
「持ってないからな。」
「ないと寒いかもよ?あたしの貸そうか?」
「いくらなんでも、女物はつけられないだろ。」
「あ、そっか。」
「じゃあ、行くぞ。案内頼むな。」
「うん。任されたよ。」
美雪はニッコリ笑ってピースサインをした。
「…やっぱり案内はいい。」
「なんで!?」
「いや、これはあまりにも寒いだろ…。」
怜はドアを開けた直後にまた閉めた。
「大丈夫だよ~。出れば慣れるし、今日はあったかい方だよ?」
「…俺は国に帰る。」
「国って…怜の故郷はむしろここじゃない。」
「…くっ。ハメられた。」
怜は仕方なさそうにドアを開け、外に出た。
「全っ然慣れないじゃないか…美雪、俺を騙したな?」
「騙してないよ~。あたしはもう平気だもん。今日は風もないしね。」
「つまり…風が強い日は美雪でも寒いと…俺はその日は学校を休むことにするよ。」
「もう…ほら、行こう?」
「仕方ない。行ってやるか。」
理屈屋で若干短気な怜と、おっとりマイペースな美雪。
基本的には正反対なのだが、それが奏功しているのだろうか。
二人は確かに子供の頃のままだった。
それが…少しずつ動いていくことになる…。
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