街の風景。

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「俺、もう、帰り、たい。」 「怜。言葉の区切り方が変だよ?」     天村家を出て100m。 怜は早くも弱音を吐きはじめた。     「だって…こんなに寒いなんて反則じゃないか…。」 「今日より寒い日だってあるよ?」 「………美雪。俺は春まで冬眠することに決めた。」 「明日から学校が始まるんだけど…あ、教室ならあったかいよ~。」     怜が転校する学校は美雪と同じだった。 小さい頃に一緒に勉強することが多かったせいか、成績も同程度に落ち着いたらしい。 そのことを、美雪は素直に喜んでいた。     「教室がこの寒さだったら、凍死者続出だろ…まぁ、我慢するしかないか。」 「うん。頑張ろうね。」     美雪はニッコリ笑って言った。 怜は少し照れ臭くなって、突然走り出した。     「わぁ。怜~、いきなりどうしたの?」 「早くあったまらないと凍死しそうなんだよ。」     目を白黒させながら追い掛けてくる美雪を振り返らないまま、怜はスピードを落とした。     ドンっズシャっバタっ     『……………………。』     「美雪…お前にはブレーキはついてないのか?」 「怜…ぶつかったのあたしじゃないよ?」 「は?美雪以外の誰が俺を倒して背中に乗っかるくらいの衝撃で追突してくるって言うんだよ?」     急にスピードを緩めた怜に誰かが見事に追突したのだが、声の位置からしてどうやら美雪ではないらしい。     「えっと…ご、ゴメンなさい…。」     状況が分かったのか、怜の背中から女の子の声がした。     「誰だか分からないけど…謝るのは後でいいから、とりあえずどいてくれ。地面が冷たくて泣きそうだ。」 「あ!ご、ゴメンなさい!!」     ようやく立ち上がると、怜はコートに付いた雪を払った。     「本当にゴメンなさい…。」     視線をうつすと、小柄な女の子が心底から申し訳なさそうにペコペコしていた。 歳は…怜や美雪より少し下だろうか。 茶色がかったセミロングの髪。 大きな瞳…だが、今はかなりおびえているようだ。     「あぁ…そこまで謝られたらもう怒れないだろ。」 「え、じゃあ…。」 「いや、許さないけどな。」 「えぇ!?許してくれないの!?」     女の子は驚愕の表情になった。     「怒らないか許すかは、まったく別の問題だからな。」
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