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「あ、そうだ。今日案内してくれたお礼に、ここは俺がおごるよ。」
怜がそう言うと、美雪は目をキラキラさせた。
「ホントに?わぁ…迷っちゃうよ…。」
「ただし、157円以内でな。」
「えぇ?157円じゃどのケーキも食べられないよ…。」
一瞬にして悲しそうな顔になった。
「はぁ…冗談だよ。でも、一つだけだからな?」
「うんっ!」
数分後…美雪は幸せそうにモンブランをながめている。
「ん?食べないのか?」
「だって、怜のがまだきてないよ?」
「俺はこれだけだぞ。」
怜はコーヒーカップを軽く上げながら答えた。
「あたしだけケーキとオレンジジュースじゃ悪いよ~。」
「いや、全然気にしなくていいぞ。コーヒーもなかなかうまいしな。」
「もしかして…甘いのダメなの?」
「そんなことはないぞ。」
「虫歯?」
「だったら、入る前に言ってるよ。」
「ダイエット中?」
「めんどくさい。」
「じゃあ…。」
あまりに聞いてくるので、怜は半眼になって答えた。
「さっきCD買っただろ?」
「うん。」
「で、また買いに行く予定なんだよ。」
「うん。」
「つまり、予算の都合だ。」
「そんな…だったらおごってもらわなくていいのに…。」
美雪は少し泣きそうな表情になった。
「あのな…俺が感謝してるからそれでいいんだよ。」
「でも…。」
「あんまりグダグダ言ってると、俺がそれを食うぞ。」
美雪のモンブランを指差して言うと、美雪はニッコリ笑った。
「じゃあ、モンブランを半分ずつ食べよう?」
「それはもう美雪のだぞ?」
「あたしは、怜と食べたいからいいの。」
言いながら、美雪はもう切り分けている。
怜は仕方なさそうに店員を呼び、皿とフォークをもう1つずつもらった。
「はいっ。半分こだよ~。」
「やけに楽しそうだな。」
怜が苦笑しながら受け取ると美雪はフォークでモンブランの端を削りながら微笑んだ。
「うん。それに、嬉しいんだよ。」
「そうか。そんなにモンブランが好きか。」
「それもあるんだけど、怜が変わってなくて…こーゆーところで損得なし動けるのは怜らしいなって。それが嬉しいよ~。」
怜はモンブランを食べつつ嘆息した。
「その、仕方なさそうなため息もそのままだよ。」
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