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「すっかり遅くなっちゃったねぇ~。」
「座り過ぎて、尻がちょっと痛い。」
「怜…おじさんみたい。」
「気にするな。」
喫茶店「SOPHIA(そふぃあ)」で話し込んでいたら、外は暗くなっていた。
「せっかくだから、夕飯食べてから帰る?」
「いや、それはやめておこう。」
怜はSOPHIAの方を見ながら言った。
「志乃さんのおいしい料理が楽しみだからな。それに…。」
「それに?」
「経済的な都合で。」
「あ、そうだったねぇ~。」
美雪はにっこり笑った。
「理由はともかく、怜ならそう言うと思ったよ。」
「なんでだ?」
「お腹減ってるだろうし、なにより…お母さんの料理おいしいからね~。」
怜は苦笑し、歩き出した。
「さて、俺が先頭を歩くと迷子になるぞ。美雪、急げ。」
「わぁ。ちょっと待ってよ~。家はそっちじゃないよ~?」
一応、分かってはいたのだが、美雪のことをからかいたくなった怜は、逆方向に向かった。
「怜~。ちょっ…ちょっと待ってよ~。」
美雪が走って追い掛けてきているようだったので、とっさに横に避けた。
「あっ。」
べしゃっ…。
(こけた…。)
後ろから抱き着こうとしたのか、美雪はものの見事に前のめりになっていた。
「えっと…美雪…?」
「うぅ…怜がひどい~。避けた~。」
「今のは俺が全面的に悪かった。なんか、襲われそうだったんでな。」
「襲わないよ~!怜がひどいよ~。」
「俺が悪かったって…ケガしてないよな?」
「心に重傷を負ったよ…。」
「じゃあ、どうすりゃ許してくれるんだ?」
美雪は一考をめぐらせた。
「家までおんぶ。」
「よしきた。」
「えぇ!?」
「ほら、早く。」
「………。」
「男に二言はない。」
「あたしは女だけど…。」
怜はすでにおんぶする体勢で待っていた。
「この体勢、意外と疲れるんだが。」
「怜って時々分からないよ…。」
物凄く仕方なさそうに怜の背中に身を任せた。
「うぉ…重…。」
「あたしはそんなに重くないよ~。」
「このくらいだと体重は…。」
「わぁ~!言っちゃダメ~!!」
「コラ、人の背中の上で暴れるな。」
怜は歩きながら語りかけた。
「前にもこーゆーことなかったか?」
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