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「怜…昔のこと、思い出したの?」
美雪はビックリしたように怜に問い掛けた。
「だから、人の背中で暴れるなって。」
「あ、ゴメン。」
「思い出したっつーか…なんだろ。デジャヴみたいなもんかもな。」
「そっかぁ…ちょっと残念。」
「別に、昔のことなんかいいじゃないか。」
怜がため息をつきながら言うと、美雪は不満そうに言った。
「よくないよ!だって…もういいよ。」
「なんだよ。歯切れが悪いなぁ。」
「…………。」
それっきり、美雪は黙ってしまった。
「悪かったよ。ホントは俺だって思い出したいんだけど、なかなかうまくいかないんだ。」
「ううん。あたしこそゴメン。記憶が少なくて大変なのは怜なのに…。」
「まぁ、俺がこの街にいることは間違いないんだし、美雪も志乃さんもいるから不自由は感じないよ。悪い気はちょっとだけするけどな。」
それは本当だった。
違和感はあるものの、今までの引っ越しよりも気が楽なのは、この幼なじみの存在が大きい。
怜は、背中の美雪に心の中で少しだけ感謝した。
「お母さんも、もう怜を家族として見てると思うよ。」
怜から美雪の顔は見えないが、声が嬉しそうだった。
「家族だとか考えだしたら、風呂上がりに裸でうろつきそうなんだが。」
「あ、あたしはそんなことしないよ!?」
「いや、俺が。」
「ダメだよ~。あたし、怜と同い年の女の子だよ?」
「家族なんだろ?」
「家族でもそんなことしちゃダメなの!」
美雪は真っ赤になってあたふたしていた。
「だ~か~ら~。背中で暴れるなって!」
「うぅ…だって…怜がひどいよぉ…。」
そうこうしてるうちに、美雪を背負った怜は天村家に着いた。
「よ~やく着いたよ…すっげぇいい運動になったな。」
「ありがとう~。」
「さて、中に入るとするか。」
「そろそろ降りるね。」
怜はその言葉を無視したままドアを開けて家に入った。
「ただいま帰りました~!」
「ちょっと…怜、降ろしてよ~。」
「おかえりなさい。そろそろ帰ってくるんじゃないかと…あら…二人とも、仲良さそうね。」
「怜が降ろしてくれないんだよ~。」
「おんぶしろって言ったのは美雪だろ?」
「そうだけど…怜、性格悪いよ…。」
美雪は怜の背中で涙目になっていた。
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