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「あぁ…おでん…うまかった…。」
怜は幸せそうに目を閉じた。
「お粗末様でした。」
「いやいや、ご馳走様でした。」
怜は深々と頭を下げながら言った。
「怜…なんかやっぱりおじさんみたいだよ…。」
「バカ者。こんなにおいしいものを食べさせてもらって、頭を下げないのは武士の恥だ。」
「武士だったの?」
「おう。俺こそがラストサムライだ。」
「ちょんまげは?」
「心の奥に立ってるのさ。」
「刀は?」
「ここにある。」
怜は自分の胸を差しながら自信満々に答えた。
「怜君、美雪が真に受けますよ?」
志乃が楽しそうにツッコミを入れた。
「怜…よくそんなにポンポン浮かぶねぇ。」
「あぁ、完全にシナリオ通りだからな。」
「う~。なんか、怜に遊ばれてる気がするよ…。」
「よく分かったな。その通りだ。」
「ひどいよ~。怜がいじわるだよ~。」
そんな二人を志乃が懐かしそうに見ている。
「どうしたんです?志乃さん。」
「いえ。二人がホントに昔のまま…そのまま育ってくれたことが嬉しいんですよ。」
それを聞いて、美雪はにっこり笑っていた。
食後、みんなでテレビを見ていたら、美雪がユラユラ揺れている。
それを見た怜は、美雪に声をかけた。
「美雪。起きてるのが辛かったら、もう寝た方がいいぞ。」
「ふにゅ。」
「明日起きれなかったら俺も遅刻するんだから、頼む。」
「うにゃあ。」
「おい。」
「にゅ。」
「…………。」
「にゅう。」
怜は立ち上がり、美雪の耳元へ…そして。
ふぅ~~~。
「うにゃあ!?」
「よし、やっと意識が戻ったか。」
美雪は耳に息を吹き掛けられ、目を白黒させている。
「ビックリしたよ…怜、なにしたの?」
「ん?企業秘密だ。」
「なんの企業?」
「秘密結社だ。」
「もう…なにされたのかよく分かんなかったけど、あたしホントに驚いたよ…夢から覚めちゃった。」
「どんな夢見てたんだ?」
怜が何の気なしに聞くと、美雪は口を開きかけ…。
「ううん。やっぱり内緒。」
「内緒にされるとなおさら聞きたくなるのが人の性ってやつなんだが。」
「怜だって内緒にしたでしょ?これでおあいこだよ。」
にっこり笑って言うと、美雪は部屋に戻っていった。
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