雪が降る街。

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「そう言えば…あたし、怜がなんでうちに居候することになったのかを詳しく知らないんだよ。」     不満顔になり、そのまま続けた。     「おじさんの仕事の都合ってことと、お母さんがOK出したことくらいしか…。」 「いや、もうそれが全てだと言ってもいいくらいなんだけど。」 「だって、あたしが聞いたの3日前だよ?」 「奇遇だな。うちのお袋が美雪のお母さん…志乃(しの)さんに電話したのも3日前だ。」 「えっ…………。」 「………つまり、俺もビックリする間もなくここにいるんだよ。」 「わぁ…。」     ひたすら驚いている美雪に、怜は淡々と説明を始めた。     「親父が半年くらい単身赴任しなきゃならないことになったんだけど…。」 「うん。」 「聞いたかもしれんけど、親父は去年ちょっと入院してたんだわ。」 「うん。お母さんも心配してたよ。」 「で、お袋もついていくってことになったんだけど…。」     ―――――――――――――― ここから下はモノローグです。 ――――――――――――――     「怜~。お母さんね、お父さんについていくことにしたから。」 「したからって…半年だけだろ?そんなとこに転校なんかしてられないよ。」 「そうなのよねぇ。」 「いっそのこと、俺に一人暮らしさせてよ。」 「家事なんて何も出来ないくせに馬鹿なこと言うんじゃないわよ。」     そこで母は一考し…。     「あ、そうだわ。」     ――――――――――― モノローグ終わります。 ―――――――――――     「…ってことで、こんなことになったわけ。」 「へぇ…。」 「その時に出された条件が、美雪のお母さんを志乃さんと呼ぶこと。」 「うん、それは聞いたよ。おばさんって言われるのは嫌なんだって。」     そう言うと、美雪はクスクス笑い出した。     「でも、急に悪いな。こんな中途半端な時期に。」 「あたしはいいよ。お母さんとあたししかいないから、男の人がいると心強いしね。」     そう。 美雪は志乃と二人で暮らしていた。 物心がついた頃からそうだった。     (美雪と志乃さんが仲良いのは相変わらずみたいだな。)     怜が心配するようなことではないのだが、少しホッとした。
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