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「ただいま~。」
「おじゃまします。」
怜と美雪は天村家に着いた。
「おかえり~。あら、美雪…彼氏さん?」
「……へ?違うよ~?」
「じゃあ、お友達かしら?」
「友達ってゆーか…幼なじみかな…?」
「美雪ったら…怜君以外にそんな子いたの?」
「お母さん…怜だよ?」
「……………あら。」
どうやら志乃も、怜だと分かったらしい。
「怜も…ニコニコしてないでお母さんに言ってくれたらいいのに…。」
美雪はまた不満顔になった。
「お久しぶりです、おば…志乃さん。」
「はい。久しぶりですね。怜君。久しぶりのこの街は寒かったでしょう?シチューを作っておきましたから…夕飯にはちょっと早いですけど、いかがですか?」
「凍えそうだったんで、是非ともいただきます。」
「なんか…あたしがいないとこで話が進んでるよ…。」
ため息に気付いた志乃は美雪に話し掛けた。
「美雪も食べる?」
「食べるよ~!」
「あ、美雪…。」
怜はリビングに走っていきそうな美雪を捕まえた。
「どうしたの?シチュー食べないの?」
「食べる。けど、その前に荷物を置きたいなぁと…。」
「…あ、そっか。」
そこでニッコリと笑い、言った。
「うん、怜の部屋に案内するよ。」
玄関横の階段を上がって一番奥の部屋…。
「ここが、今日から怜の部屋だよ~。」
「おぉ、ありがとう。」
「で、こっちがあたしの部屋~。」
美雪は隣の部屋のドアを指差した。
そこには、子供の字で「みゆきのへや」と書かれた表札がかけてあった。
「美雪…その表札…。」
「うん!」
「なかなか凄い字だな…。」
「そうだねぇ…。」
「美雪の字か?」
「違うよ~。」
美雪は少し肩を落としてため息をついた。
「怜が、あたしの8歳の誕生日にくれたんだよ?」
「………我ながら、変なものをあげたもんだなぁ。」
「次に誰かにもらえるまで使えって怜が言ってたから、約束通り使ってるんだよ。」
「ぐあ。過去の恥がこんなとこにあったか…。」
「まだ誰からも表札はもらってないからそのままだね。」
「俺以外にこんなのを贈るやつはいないだろ…。」
「だったら、もうしばらくこのままかもしれないね~。」
怜は嘆息し、自分の部屋に荷物を置きに行った。
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