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朱い血が壁や地面のアスファルトに大量に付着している。
そんな状況を創り出したのは私であり彼だ。
彼の身体から血液を噴出させたのは私で、血液を自身の身体から噴出させてしまったのは彼。
……「ただそれだけ」……。私は嗤っているのだろうか、いや、笑っている。
頬の筋肉が僅かに吊り上がっているのが神経から脳へ伝わり脳がそれを理解している。
正直言って快感だ。全身が心地良い寒気で満たされていく。
しかし、物足りない。
何故か。そんな事は解りきった事だ。「生きている」と感じる事が出来なかったから。
今、私は生きているという事を知識として、記憶として、確認している。心臓を貫かれた記憶は無いし、頭は割れてなどいない。だから、生きている。
Q.E.D.
私は苦笑する。
そして、朱い行き止まりの裏路地から立ち去った。
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殺人現場に立つ彼女の表情は「無」だった。
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