悪循環

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薄暗く、清潔感は感じない。   空気は冷たく殺伐とした部屋。   明かりは、二十メートルくらい高さのある天井に作られた明かり取りの窓からしか、このコンクリートでできた部屋には入っていない。   部屋には男が一人ブツブツ言いながら立っている。   「いったいここは何処なんだ、俺は誰なんだ…」   この男、思い出という分野に関しての記憶がないらしい。   いわゆる記憶喪失。   したがってここが何処なのか知るはずがない。   自分の名前すらしらないのだから。     男がふと足元に目をやると、女が一人死んでいる。   男は臆病者なのか、すぐに短く小さな悲鳴をあげ、この部屋唯一の出入り口であるドアへと走った。     しかしドアには鍵がかかっていて部屋から出ることはできなかった。     男は落ち着きを取り戻し、そっと女の死体のもとへ近づいた。   この男小心者だが冒険心は強いらしく、うつぶせになっている死体をあおむけにした。   死体の女は、髪は長く黒髪で、鮮やかな黄緑色のTシャツと白いロングスカートを身につけていた。   女は心臓を刺され死んだようだ。 左胸が赤く染まっている。   男は気味が悪くなり、部屋から出ようとドアを開けた。   ドアはすんなり開いた。   「んっ、確かさっきは鍵がかかっいたのに…」   と、普通は思うだろうが、今の男にとっては気味が悪い部屋から出れた事の方が嬉しく、そんな事には全く気付かなかった。
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