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部屋を出るとそこもまたコンクリートでできた廊下だった。
雰囲気は変わらなかったが、そばに死体がないためか気持ちは少し和らいだ。
今度の明かりは人工的で、天井から七メートル間隔くらいで裸電球が取り付けられている。
男は冷たい廊下を進んだ。
部屋といい廊下といい、まるで牢獄のような場所だった。
廊下に響く男の足音はさらに無情さを増している。
何の変化もないただ長い廊下をしばらく進むと、紅いじゅうたんが敷かれていた。
その先には上へと続く階段がある。
男はためらうことなく階段を上った。
階段の上には扉があった。
しかしまたも鍵がかかっている。
「ここにも鍵が…」
男はそう言いかけて、さっきの“鍵がかかっていたはずのドア”を思い出し、身を震わせた。
だが部屋を出てからこれまで何もなかったのだから。
と、男の頭は目の前の扉を開ける方法を考えることに切り替わっていた。
何かないかと探した。
するとポケットに折りたたみ式のナイフが入っていた。
ナイフを鍵穴に挿し回した。
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