始まりは突然に

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     秋吾(しゅうご)と親友の夏樹(なつき)には学校の帰りにいつも立ち寄る場所がある。  和風喫茶で手作りのあんみつやら甘いものが置いてあって、若い人から老人にまで常連がいる。  秋吾は甘いものが苦手ながら、たまに食べるスイーツは甘さを抑えて出してくれて美味しいと思っていた。  『気まぐれ兎』  それがこの店の名前で、店員はオーナーでもある二人の女性だけ。  その内の一人とひょんなことから知り合い、以後この店に入り浸っている。  190近い大男の秋吾が店の入り口に立つと、入り口の日差しを遮るので店の二人はすぐに気づいた。  いつも秋吾と夏樹はカウンターの中央に座り、二人の女性と話していた。  一人は木通(あけび)と言って、おっとりとしていて初めに知り合った人。  もう一人はその木通をこの店に送ったことで知り合い、木通とは対照的に艶やかでロングの髪と赤い唇が印象的な桔梗。  二人は店ではいつも着物だった。  「秋吾は今日は何にする?」  秋吾は甘いものが得意ではないので、いくら美味しくても毎日は食べない。  変わって夏樹は大の甘党でこの店の甘いものは全部制覇をし、新作の試食係にまでなった強者で出されればいくらでも食べることが出来た。  
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