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「それって恋わずらいじゃないの?」
桔梗も夏樹も呆気に取られて、すぐに夏樹は否定した。
「はっ…。ないない。それは絶対ないよ」
と言って笑いがこみ上げてきて、声もなく肘を突いた左の手の平の指先に、額をつけて一人笑っていた。
すると秋吾は箸を持って葛切りを黒蜜の入っている器に半分ほどつけながら呼んだ。
「桔梗さん」
「ん?何?」
秋吾を見て吹き出しそうになるのを押さえて答えた。
「俺の彼女になりません?」
桔梗も夏樹も笑顔が多少ひきつって固まった。
秋吾は葛切りを口にチュルッと含んでモグモグと食べている。
夏樹はゆっくりと秋吾が座っているのとは逆の方向へ顔を向けた。
(しゅ、秋吾が女に告白した…。あの秋吾が!!)
夏樹の額に変な汗が浮いて動けず、まるで動いたら恐ろしい事でも起こるのかのようにおとなしくしている。
夏樹にはよほど衝撃だったようだ。
桔梗は桔梗で何やら複雑な表情をして、木通に助けを乞うように見たが、木通は何やら目で合図を送った。
「あっとぉ…あたし言ってなかったっけ?」
桔梗にしては何とも歯切れの悪い物言いだった。
秋吾は箸を置いて桔梗を見た
「彼氏がいるとか?」
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