コンプレックス

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コピーが刷り上った 高い紙の山を抱えてさやかは 庶務課に届けた 自分の部へ帰ると ティータイム 「お疲れ、お茶しようね」 明里 と春奈の迎える笑顔が 昨日よりくすんだ絵にみえるのは気のせいか 砂糖をひとさじ混ぜあえあわせてみても 苦さが口に広がる 定時まえに 香坂に 「今日はいいよ」 温度のない声が耳の横にくる 「はい」 「お先に失礼します」 明里はその後姿にかけようとした 「お疲れさん」 の声が喉で止まって乾燥してしまうように 発せられず 落ちていく
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