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「好きな人が……いるから」
伏し目がちに櫻が呟いた台詞を、俺は聞き逃さなかった。
好きな……人がいる?
告白すれば良いんじゃない?と思った俺は不粋なんだろうか。
……俺には量ることの出来ない、理由があるのかもしれない。
今はそれで納得しよう。
しかし、これでは櫻の要求を受けざるを得なくなってしまう。
それは望めない展開であること間違いない。
「それで、受けてくれるのかな?」
悪魔の笑みが俺を射ぬく。
俺は……俺は……!!
「謹んでお断r「拒否権は無いよ?」」
あぁ、俗世はなんて無情なのだろうか。
抵抗は幾らでも出来たんだ。
ただ、それは俺の大切なものを捨てることに成りかねない。
大切なそれと一日彼氏を天秤に掛けた時、有ろう事か天秤はその陳腐なプライドを支持した。
さよなら、平穏。
元気でね?
俺の愛した平穏は、今この日を持って決別だ。
また会おう……!!
なぜか、櫻は終始頬笑んでいた。
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