”やまなかおんせん”

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 その女将から事情を聞くと、”ここを真っ直ぐ”の看板から真っ直ぐ進んでいくと、二時間ぐらいでちゃんと温泉には着くらしい。しかし、俺とヨモギの掛け合いが面白かったから、山の中で”遊んで”貰ったのだそうだ。その話を聞いて勿論怒り狂った俺だが、 「料金を無料にしますから、好きなだけ泊まって行って下さい」  と言って丸め込まれてしまった。女将(主)に遊ばれた客は、大概これで丸め込まれるんだそうだ。その例外でない俺も俺だが、料理も旨かったし、温泉も良い気持ちだったので、まぁ良しとしよう。それに、思いっきり超常現象も体験できたし、良い思い出になるだろう。  元々、”山中”温泉はその”遊び”相手達に対するアフターケアが主目的なんだそうだ。そして、”山仲”の方は、目くらましの為だけに存在する温泉だと言う事は言うまでもない。 しかし、一つだけ疑問が残る。 ヨモギは、一体何者だったんだろう……。 幽霊なのか何なのか、今度ここに来るときは、是非正体を問い詰めてみたいもんだ。  帰りのバスに揺られながらそんな事を思い、小さくなって行く山仲温泉に苦笑いを送った。
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