”よもぎちゃん”

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(うおお~! 生足すげぇ!)  振り返ると、まず細長く綺麗な”露出”された足に視線が行く。その幽霊は、すその思い切り短い、今にも”みえそう”な着物を着ていた。  更には、別に何処にも血が付いている訳でもなく、外傷も見当たらず、足の先が透けている訳でもない。着物も昨日洗ったように綺麗な山吹色だし、陽気そうな少し幼さが残る笑顔は十代後半ぐらいに見える。それに、何と言うか、身にまとっているオーラが、 (不幸背負ってるように見えねぇ~……)  初めてみる幽霊(予測)ではあるが、ホラー映画などで見るおどろおどろしい雰囲気は全くなく、寧ろ、明るく楽しく「幽霊楽しんでます!」と言った意気込みすら、目の前の笑顔から感じ取れる。 「どうしたの? 私の事まじまじと見て。あれ? 着崩れしてるとか?」  そう言って着物の確認をする。 「いやいや、お前、本当に幽霊か?」 「へ? 幽霊って?」 「お前の事だよ。お前は、あれだろ? この先にある自殺の名所で”人生に疲れた~”とか言って滝に身投げした、不幸な少女だろ?」 「ハァ? 人の人生、勝手に不幸って決め付けないでよ! 大体、この先に自殺の名所なんてないし、私は幽霊なんかじゃありません!」 「じゃあ、何だよ」 「何だよって、アタシはヨモギ。アナタは?」 「ああ、俺は富田茂、富田でも茂でも好きなように呼んでくれ」 「じゃあ、茂君で」  ……知らないうちに自己紹介させられてるな。何だか、幽霊だろうが何だろうがどうでも良くなってきた。  そんな事よりも――、 「ああ、この格好の事?」  どうやら俺は、短すぎる着物のすその先を知らない間に見つめていたようだ。それに気付いた幽霊は、着物のすそをチラッとまくってみせる。 (おお!!!)  目の保養、もとい目の毒だ! と言うか親はどんな教育をしているのだ! 何と破廉恥な! 思わず食い入ってしまったじゃないか! 「あれ~、もしかして、この下を見てみたいとか?」  と、小悪魔のような笑みを浮かべる。 そりゃあ、ねぇ。 「ハイ」  と、幽霊はすそを全部上げて見せた。
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