”よもぎちゃん”

3/8
前へ
/24ページ
次へ
「ぉおお……!?」  上げたのは一瞬だったが、着物の下には得体の知れない緑色の物体が見えた。例えて言うなら、 (龍?)  何故龍が? と言うかなんだよそりゃ。 「ん? もう一回見たい? ハイ!」 「――お゛お゛!!!」  今度は……グラサン!? いやお昼のあのおっさんだ!  やばい、さっきは龍で今度は友達の輪!? お前のそこどうなってるんだよ! 意味がわからねぇよ!  ああ、もう考えるのも馬鹿らしい! 下心はとりあえず頭の片隅に置いとくしかねぇ。今大事なのは山中温泉に行く事だ! こんな所で御陽気幽霊とじゃれあってるのは馬鹿らしすぎる!  俺は咳払いをすると、気を取り直してヨモギに質問する。 「お前さ、山中温泉って知ってるか? 俺、其処目指してるんだけど」 「そうなんだ。それなら、この道を真直ぐ二十分ぐらい行けば見えてくるよ」  ゲッ! まだ二十分も歩くのかよ。百分の予想が外れたよ。疲れる事だが、道が間違ってないようだから良しとするか。 「そうか。さっきの分かれ道で右って言ったのもお前だろ? それも含めてサンキューな」  と、ヨモギに礼を言って先を急ぐ事にする。  こいつとの馬鹿らしいやり取りのお蔭で、すっかり日が暮れている。色んな意味で疲れたし、早く温泉に浸かりたいもんだ。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加