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「うん! 精一杯の作り話をしたよ!」
「そうだそうだ、精一杯の作り……作り話かよ! なんっだよそりゃ!」
「いったぁ……。突っ込むのが遅いよ! 茂君!」
「つ、突っ込むとかそう言う問題じゃないだろ! 俺の心の涙を返せ!」
「あれ? ちょっと感動しちゃった? やった! 成功!」
力強くガッツポーズを決めるヨモギ。
(こ、この糞幽霊!!!)
「帰る!」
頭に来すぎたぞ! 夜の森の中、何でアホ幽霊の作り話に騙されにゃならんのだ! もう無視だ! ムシ!
「あ~ん! 待ってよ~怒らないで~」
森の中に入ったのが午後三時、そして”名所”に着いたのが六時で三時間。そこから三時間、疲れて足が遅くなっている事を含めれば四時間で、十時には山道を抜けられる筈。しかも分かれ道は一回きりで、それは来る時右に言ったんだから出る時には左に行けばいい。迷う事なんかある訳が無いんだよ。
「しかし」
もう十一時でっせ? あの分かれ道すら現れませんぜ?
「……オイ!」
しょうがなく、後ろにいるヨモギに声を掛ける。こいつはやはり幽霊だ。そうでなくとも6時間歩き回って俺は疲れてハァハァ言ってるのに、こいつは疲れる様子も無く付いて来やがる。少なくとも人間ではない。
「なあに」
後ろから、何とも楽しそうなヨモギの声がする。ああ、声を聞くだけで腹が立つ。
「あのさ、俺、ずっと真直ぐ歩いてきたよな?」
「うん」
「じゃあ何であの分かれ道が見えて来ないんだ?」
「ああ、この森ね。夜になると道がぐちゃぐちゃになるんだよ」
”ヨルニナルトミチガグチャグチャニナル”
……言ってる事の意味が分かりませんが? グチャグチャになるとはどう言う事なのでしょうか?
と、俺が理解できないで顔をしかめていると、ヨモギが説明を加える。
「ええっとね。夜になると、この山の精霊の主さんが人を迷わす為に道を入れ替えるんだって」
(ナニ!?)
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