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「眠れん!」
寝袋に入って目をつぶったものの、今日あった色々な事が思い返されて、なかなか眠りに着く事ができない。
”やまなか”間違いに始まり、森で迷って変な幽霊女ヨモギと出会い、”名所”に連れて行かれ、主とか言う性質の悪いおっさんに遊ばれ、今は夜の森の中で寝袋に篭っている。
「俺は温泉に行こうとしていたのに何故!?」
考えれば考えるほど、愚痴れば愚痴るほど馬鹿らしい事この上ない。それに、
――迷って出れなくなっちゃって、気付いたらこんな風になってたのよ。
ヨモギの言葉を思い出してしまう。今が何所かもわからないまま朝を迎えて、道がぐちゃぐちゃに成らないとしても森から出れるのだろうか?
「チッ! 考えてもしかたねぇじゃねぇか! 早くね――」
”ガサッ!”
(!!)
真後ろで物音がした。振り返ってみると、木に立て掛けてあったバッグが倒れただけだった。
「お、驚かすなよ……」
ため息をついて目を閉じる。辺りには静寂が戻るが、心臓の鼓動は少し早さを増した。
”バサッ!”
(!!!)
暫くすると、近くの木に止まっていた鳥が、行き成り飛び立った。
(びっくりさせやがるぜ、この糞鳥!)
「ゴォォォーーー!!!」
(!!!!!)
又暫くすると、遠くから何か獣の咆哮のような音が聞こえる。
(何? 熊? 狼? どっちにしても洒落なんねぇじゃん……)
”ゴォーーーーーン……”
(!?)
又又暫くすると、遠くから鐘をつく音が聞こえる。この辺りに寺でもあるのだろうか? さっき”名所”を見てきたので、この鐘の音が実は名所から流れてきた心霊現象なのでは? 等と思ってしまい、緊張感がじりじりと高まった。
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