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腕時計を見ると、ニ時半と表示されている。
「日が昇り始めるまで、あと4時間って所かな」
寝袋をしまうと、木を背もたれ代わりにして座り、辺りをぼけっと眺めている。そう言えば、俺が寝るのを諦めてから、変な音達は聞こえて来なくなった。やはりあれは主の悪戯だったんだろう。
「それにしても、どうしてこうなったんだろうな」
と、さっきから同じ事を愚痴愚痴言っている。言ってどうにかなる訳でもないが、自分の置かれている状況の滑稽さを振り返ると、どうにもため息が出て仕方がない。
ふと、自分の担いで来たバッグに目をやる。
「そうだ! まだビールが何本か入ってたな、それ飲んで気でも紛らわすか!」
そう言って、バッグに手を伸ばそうとすると、
”ガサッ!”
「!!!!!」
遠くから、茂みを書き分ける音がする。
(また、主の悪戯か?)
そう思うけど、その音はどんどん近づいてくる。
何が現れるんだろうか? 音のした方を凝視して、つい身構えてしまう。すると、音の主がこげ茶色の毛皮を身に纏った強大な”ア・イ・ツ”である事が認識できた。
(く、くまったーーーーーーーーー!!)
と、心の中で親父ギャグを一発かますと、すかさずバッグを掴み逃げにかかる。が、
「エイッ!」
と言う”誰かさん”の掛け声と同時に、俺は勢い良く顔面から地表に突っ込んだ。
「イッテェ!」
俺が顔面を押さえて痛がる横で、”誰かさん”は、
「作戦成功!」
と言ってはしゃいだ。良く足元を見ると、罠っぽく縛ってある雑草が、俺の脚に引っかかっている。こんな事をする”誰かさん”はただ一人、
「ヨモギよぉ」
「ん? 何々? 引っ掛かって悔しい? そんなの、私を邪険に扱った罰だよ! ヨモギ様の実力、思い知ったか!」
そう言ってヨモギは高笑い。
(く、糞ガキ……)
”ガサッ!”
「!!!!!」
(しまった! 糞に構っている暇はなかった! 早く逃げないと!)
と思って駆け出そうとするが、茂みの中からは強大で凶悪な面の熊が飛び出してきた??
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