その手に最後に残るモノは

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                                                何も……無い。    無理だった。    だって。何もしてない。   まだ。何もしてないのにいきなり殺された。      それができる奴だったのだ。      そんなデタラメなやつに挑んだのだ。      ははは。      なんて、無謀だったのだろうか。          真っ暗だ。    カラダはピクリとも動かないし。      剣も。     勇者の力も。    ミカエルの力も。    通じない。          多分、あれには。        何も通じない。              だから、もういい。        オレにあったあらゆる武器が通じないんだから。      悔いもない。        これで――――――                    『いいわきゃねぇだろバカ!!』        !!??       え…………      暗い世界で、懐かしい声が聞こえた。      『なんで諦める。あんだけ神を倒すって息巻いてたクセによぉ。』       だって。オレの武器は何一つ神には通じない。届かない。      『武器?何か勘違いしてんだろオマエ。』      は………?      『さっきから聞いてりゃ剣だのわけわからん力だの。オマエの武器ってそんなんか?』      何を。言ってるんだろう。この人は。        『わかんねぇか?オマエは勇者だ。思い出せ。思えばオマエのそれを見て何度も何度も“生意気”だって思ったもんだ。』        それってなんだ?      剣も。    神が与えた勇者の力も。   ミカエルがくれた新しい力も。      全部無くして尚その手に残るモノ―――――?                あぁ、そうか。        “勇者”      勇ましき者。        何者も恐れない。        その武器は――――          “勇気”。        『それがあるかぎりオマエは何度殺されようが死なねぇ。神の力なんざ関係ねぇ。さぁ、もういいだろ。』         えぇ、ありがとう。リ――
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