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駅から出ると、秋の爽やかな風が優しく髪を拐う。 それをうざったそうに払うと、はぁ・・・と、深い溜め息を吐き、今年で何回目だろ・・・と、声変わりを済ましたのか疑わしい程愛らしく、そして愁いを含む声音で小さく呟いた。 明るい茶色で癖の強い肩より少し上まである髪。 くりっとした二重の大きな瞳は、髪よりも少し暗い茶色。 鼻筋はスッと通り、色の白い肌には薄紅色の唇がよく映える。 体つきは華奢で、身長は年齢的には低い162cm。 可愛いという言葉が似合い、一見女の子にしか見えない。事実、女の子と間違えられたことは数知れない。 でも、実は男子校に通っている。 男子校に通うのだから勿論男だ。 先程の、電車での行為は、由紀を女と勘違いをしてしまった者の行いだった。 今は、学校帰りで制服を着ているのだから普通なら分かるはずだが、由紀の通う高校は、寮があり、だいたいの生徒は寮に入る。寮生は、外出時は私服でないといけないと言う校則があるため制服で電車に乗る生徒は一握りしかいない。 そのせいか、制服でいても、性別をよく間違えられる。 由紀は、寮には入らず毎日往復二時間掛け登下校している。 その二時間のうち、電車に揺られる時間は半分の一時間。 その間に、最低でも一回。 多ければ、三回は先程のように痴漢行為に会う。 そのうちの八割は由紀を女だと間違えての行為。 残りの二割は、男だと分かっていて行為に及ぶ人。 直ぐに、逃げたり、叫べばいいのだが、由紀は少しおっとりしているところがあり、いざ!と、言うときに行動に移すことが出来なかった。 この日も、自分の性格を容姿を恨みながら家までの道を自転車をゆっくりと走らせていた。 駅から五分くらい自転車を走らせた所で見覚えのない建物が視界に入った。 いつも通っているの道なのに、見たことがなかったことを不思議に感じ、自転車を方向転換させ少し近寄ってみることにした。
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