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扉は鈴の音以外の音をたてることなく拍子抜けする程いとも簡単に開いた。 由紀は、怯えたような小さな声で、こんにちわ。と中には、入らずに外から中に向かって声を掛ける。 しかし、返答はなく、由紀の声だけが、虚しく響いた。 こうしていてもらちがあかないので、由紀は少し緊張しながら中に、足を踏み入れた。 中は薄暗く、解放された扉からの光以外に辺りを照らすものは何もないように見えた。 由紀は、外からの光を頼りに中を見渡してみる。 入り口の、今、由紀が入ってきた扉のある壁側と、正面の壁以外には、戸棚が並べられ、その中には、小さな物から、大きなものまで色々の瓶が置かれている。 戸棚付近の床には、これまた、大小色々の瓶が入れられている段ボールがいくつも置かれている。 由紀は、瓶の1つを戸棚から取り、光に照らしてみた。 中身は、液体のようで、光を反射して水面が光る。 全体を見るため瓶をくるくると回していると 文字の書かれたラベルが目に留まった。 そこには白いラベルに無機的な字で -足が速くなる薬- と、だけ書かれていた。 これは、薬だったのか。と、由紀は、書かれていることよりも、薬だったと言うことに興味を示し、コルクの蓋を一瞬躊躇して、開けた。 蓋を開けると直ぐ、薬独特の臭いが鼻をつく。 確かにこれは薬で、戸棚に置かれている瓶を確かめてみたところ、残りの物もだいたいのものが薬のようだったため、由紀は、ここは薬局なのだろう。と、仮定する。 どうして店員がいないのか 不用心なのでは。と、考えていると、扉から差し込む光だけしか灯りがなかった部屋が急に明るくなり、驚いて体をびくりと震わせた。 「あれ?お客様?」 背後から、澄んだ凛とした声が響く。 由紀は顔をあげ、声の聞こえてきた方を向いた。 黒い腰より少し上まである長い髪。 由紀よりも少し高い身長。 顔立ちは整っていて、よく見なくても分かるほどに、とても綺麗な女の人がそこに佇んでいた。
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