最後の I LOVE YOU

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相変わらずミキは、楽しそうに笑っていた。 ミキとは対象的に、俺は緊張し胸がドキドキしていた。 「あっ、そこの角を左ね」 「ハァーィ!着きました」 「ここが、駐車場だから」 ミキは、本当に楽しそうだった。 俺は言われるがままに車を走らせ、緊張していたせいもあり、周りの景色さえ見る余裕も無かった。 ふと気付くと、周りには高級車が並び、天まで届きそうな位に高くそびえ立つマンションの駐車場だった。 「ビックリでしょ」 ミキが笑いながら言った。 こんな事を言いたくは無いが、流石に医者の娘は違う。 まだ、20歳の娘がオートロックの高級マンションに独りで住んでる。 正直、羨ましいと思いながらも、どことなく悔しかった。 腹違いとはいえ、ミキだって娘である。 ミキの住んでいるアパートとは、あまりにも違い過ぎていた。 こんなマンションなら、ピアノだって余裕で置けるだろうし、弾く事も出来る。 「すごいよね」 「私もね、羨ましいと思う」 「けど…。私は今のままで充分だし」 「悲しい事だけど、親の世話にはなりたくないし…」 そう言って、精一杯の作り笑顔で笑っていた。
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