最後の I LOVE YOU

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よくある知人の紹介。               それが出会いの始まりであった。そして、お互いが引かれ合い、一緒に時を重ねる事が多くなるのに時間は掛からなかった。                 ミキの白く長い指は、素敵でいて、キツイ顔立ちに似合わない笑顔と同じ位、俺のお気に入りだった。               ミキは、長くシャープな指を起用に動かし、時に悲しげなメロディー、または、愉快で楽しいメロディー、荒々しく軽快なメロディーと言った様に、様々な音を奏でていた。                   そう、ミキはピアニストだった。                      とは言っても、首都とは遠く離れた北の田舎の小さな街。 メジャーでもなけりゃ、デビューしてる訳でもない。             ミキのピアニストとしての名前や顔など知る人は誰も居なかった。                   チッポケで小さくて情けないが、普通のサラリーマンの俺にはお似合いだった。             時に、街のピアノ教室に行き、子供達に教えたり、友人のクラブで奏でる。              9年たった今でも覚えている。薄い桜色のドレスを来て、馴れないヒールを履きながらクラブのグランドピアノの前に俺を連れて行き、ハニカミ照れながら、             「リクエストは?」って聞いてきた事。
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