最後の I LOVE YOU

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ミキは言った。 「今、一番欲しい物なんだか分かる?」 「グランドピアノと防音室なんだぁ~」 正直、俺にはピアノは理解出来たが、防音室など理解出来る訳でも無く、まして二つ共に与えてあげる事など出来る訳がなかった。 「いつか自分のピアノで小さな音楽教室を開きたいなぁ~」 それがミキの夢であった。 ミキの家庭環境は少し複雑であった。 実家は今よりも北の田舎で、自然に囲まれた小さな家で、年老いた祖母が独り暮らしていた。 生まれたのは東京で、父親は都内の大学病院の医者だと言っていた。 しかし、ミキが3つの時に母親は他界したそうで、後に父親が再婚し、腹違いの妹が一人居ると言っていた。 父親の再婚相手の母とは、そりが合わない生活だったらしい。14歳の中学の時に、母方の北の田舎に預けられ祖母と二人の生活。 祖母は優しく大好きだと言っていた。腹違いの5つ下の妹とも仲が良いらしく、妹もミキと同じこの街で独り生活していると。 ただ、父親とは絶縁状態であると言っていた。 幸いな事に俺は両親も健在で、苦労などあまり経験もした事が無い普通の生活だった。 今度、「ユウ(優)に逢わせるよ!」 「一緒に、ご飯いこ!」 と言って、微笑んでいた。
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