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収穫の月。ブドウ農家たちは丹精込めて作ったブドウでワインを造る。人々はその芳醇な香りと爽やかな酸味に酔いしれ、コロヴィア台地の紅葉のように頬を紅く染める。
帝都の商業地区に住むレイン(Raine)もその一人だ。彼女はその日も滞在している宿屋で街の商人達と食卓を囲んでいた。マーロ・ルーフス、パロニーニャ、フィンティアス、キャリンディル…レインには見慣れた顔ぶれだ。皆楽しそうに談笑しながら夕食を楽しんでいた。
「また会ったね!」
一人の商人が声をかけてきたらしい。パロニーニャだ。いつも清潔なエレガンス衣料店の店主だ。
「こんばんは。パロニーニャさん」レインは答えた。
「あなたは…あの…いつもおしゃれですね」
「当たり前でしょう。むしろあなたが服に気を遣わなすぎです!」
レインの着るぼろぼろのローブを見て言った。
「服を着るだけなら誰でもできます!どこでもいいのでお城を覗いてみなさい。著名な方々は誰もがちゃんとした服…例えばパロニーニャ製の服を着ていますから。」
この時近くにいたキャリンディルがニヤリと笑うのをレインは見逃さなかった。
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