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夕食をとり終えたレインは部屋に戻ることにした。宿賃を払おうと店主のヴェラスさんに話し掛けようとすると…
間違えてカウンターのワインを盗んでしまった
「そいつを元に戻せ!このクズめ!」
店主はこちらに向き直ると強い口調で続けた。
「このこそ泥め!よくも私から盗んでくれたな!」
店主はレインの手から安物のワインを奪い返した。
「ご、ごめんなさい!」
怖くなり宿を飛び出すレイン。風が冷たかった。レインは走りながらいろいろな事を考えていた。もうこの街は近寄れない…。別の町で宿を探さないと…。
すると目の前にいた黒い鎧を着た帝都監視兵がこちらを見て走り寄ってきた。監視兵は手慣れた動きでレインの腕と肩を掴み、身動きをとれなくした。
「待て!お前は法を犯した。科料を支払うか服役するかのどちらかだ。盗品は押収させてもらうぞ」「盗品って…私は何も持ってない!…痛い!」
監視兵は腕の力を強めた。
「嘘をつくな。卑しい罪人め!お前は帝都軍に手配されている。牢獄で腐り果ててしまえ。卑しい罪人め。」
目隠しをされ、両腕を監視兵たちに掴まれて牢獄まで歩かされる。何故こんなことに…。レインは運命を呪った。やがて冷たい夜空の星の空気が暖かい屋内の暖炉の空気に変わり、そしてじめじめした牢獄の絶望感の空気へと変わる。
「泥棒を捕まえた。空いている牢屋はあるか?」
「ふむ…ここでいいだろう。ケダモノのヴァレンの野郎の向かいだ」
目隠しをとられ、牢に入れられる。腐ったような空気の中で何日も過ごす。昼夜を知らせてくれるのは堅い鉄格子のはまった小さな窓だけだ…。
私はいつ出られるのだろうか…
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