mask.1

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父は読書家だった。彼曰く「本を読まない奴は世界を知らない人間だ。政治に進む権利はない」らしい。なので父が集めた膨大な本の山は一番隅の部屋に書斎として詰め込まれている。 今では父も家に寄り付かなくなり、私だけがこの本の山を相手に一人黙々と部屋に籠っていた。 書斎は鍵がついていない。なので私でも容易く入ることができる。キイ、と錆びた音をたてて扉が開く。薄暗いそこは、私が安心できる唯一の場所だった。 .
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