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そのまま私が部屋を出て、散歩にでも行こうと玄関に向かった矢先だった。タイミングよく彼は現れた。「敦君」そう呼びかけると、彼は幾分赤い顔で私を見た。
ふらふらと覚束無い足取りで靴を脱ぎ、家にあがる。かなりの量を飲んだのだろう、少し近づいただけでアルコールの匂いがつんと伝わってくる。
アルコールと―――女の。多分この甘い匂いは香水だ。それも義母のものとは違う、もっと強い、下卑た香り。もう一度彼の名を呼ぶと、彼は不愉快そうに立ち止まった。
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