はじまり

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 桜が未だに咲ききらぬ、2XXX年4月9日。  多くの学校が入学式を行った日だった。  冬の寒さが抜けきらぬ故、外も体育館内も廊下も教室も、どこも寒かった。  新入生や保護者は凍えながら廊下を歩き、これから始まる新たな世界の拠点となる教室を目指していた。  それを横目に、一人の青年がスタスタと廊下を反対方向に進む。  前者は新入生や保護者を無視しているが、後者達は必ずといって良いほど青年を見上げた。  長身痩躯の、短く整った黒髪。制服を着てはいるが、本当に高校生かと目を疑う程落ち着きのある表情をしていた。  彼の名は【冬夜 要助[ふゆや ようすけ]】。この【四季色(しきしょく)学園】の高等部第二学年、要するに高校二年生である。  今日は、この学校の中等部と高等部の入学式の為、多くの在学生がその準備と片付けに繰り出されていた。  無論要助もその一人である。  身長が高いからという理由で、高等部一学年の全七クラスの電灯の交換の手伝いをさせられ、更に今度は体育管理室の電灯を頼まれ、こうして新入生とは反対方向に進んで体育館に向かっているのである。
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