第一話 夢屋

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貴方の夢を叶えましょう。 貴女の夢を叶えましょう。 あなたが望むことを。 私は夢屋。 お金は要りません。 えぇ、お金は、要りません。 はい。 何でもどうぞ? それが、あなたが心から望む夢ならば。 命をかけてもいい、というぐらい、真摯な願いならば。 私は夢屋。 夢を叶えるのが仕事ですから。 要りません。 お金は要りませんて。 今日はまた疑り深いお客様で。 大丈夫。 後払いでございます。 満足いただいてから、です。 そうご心配なさらずに。 願いは? お金持ち? 遊んで暮らせるくらいの? それがあなたの夢ですか? 絶対的に、真摯な夢なのですか? どんなことをしてでも叶えたいものなのですか? どんな手を使ってでも? 全てを棄てても? え、金さえあれば何を捨てても買える。大丈夫? ……そうですか。 いえ、お客様はお客様の立場がおありでしょうから。 私は何も言うことはありません。 分かりました。 では、しばしの間、目を閉じて下さい……。 はい。 あなたの口座にお金が十億ほど振り込まれたと思います。 えぇ、まだ足りませんか? そうですよね、大丈夫ですよ。 確かめたいと? そのとおりでしょう。 そこの扉をくぐりなさい。 行きたいところへ繋いでくれる。 どうですか? そんなににやけていると、気持ち悪いですよ? ……いえ、何でも。 ありがとう? 感謝、でございますね? いえ、こちらこそ。 しばらくすると、あなたをまた訪れると思います。 はい、ではまた……。
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