夢屋

二週間

お久しぶりでございます、お客様。
どうでしょうか？

満足していただけたようで、何よりでございます。

しかしお客様？　あまりあなた様のいい評判を聞かないのですが。
何でもいきなり態度が豹変なさったとか……。
この土地も他人のものでしたでしょうに。
私の渡したお金で買ったのですか？
そう。その追い出した他人さんは、今どうなさって？
知らない？
関係ない？

そうですか……そうですね。
私には関係ありません。

では、報酬の方ですが……。
え、いくらでも金を出せる……？
ありがとうございます。
しかしながら、当店はお金での取引はしておりませんので……。

はい。
ふむ、もう一度確認させて下さい。
あなたは、このお金持ちになりたいという夢を叶えて、満足されていますか？
はい。
では、この夢は、何をしてでも、どんな手を使ってでも、何を棄ててでも、叶えたいもの、でしたね？
はい。
報酬が決まりました。

……あなたの命をください。
どうしたのです？　そんな顔を青くして。
分かりました。
では、あなたの残りの寿命を私に、ください。
それがあなたの夢を叶えた私への報酬です。

いや？
どうして？
あなたは夢を叶えました。
お金持ちになったじゃないですか。
それは何を棄ててでも叶えたい夢だったのでしょう？
だから、あなたの命だって、棄てても構わないですよね？

ですから、ください。
あなたの夢の代償を。

おや、何です？
銃……。
まったく、最近の人間は都合が悪いとすぐにこれですか。
これは、取引違反、ですね。
交渉決裂です。

では、全ては夢だったということにしましょう。
買ったものはそのままですが、十億のお金は夢だった、ということで。
命もとりませんよ。
ええ、全ては、夢。
私の店に来てから今まで二週間、あなたの全てが夢です。

いいですか？
いいですね？

……では、さようなら。
二度と会わないことを願ってますよ、契約違反さん！