出会い

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『赤ちゃんは元気に生まれてくる』 無意識にも、それが当たり前だとずっと思い込んでいた。 大切な娘を授かるまでは… 海と釣りが大好きなパパが、 「大海に力強く前進する帆船の様に、自分なりの人生を懸命に生きてほしい」 と願いを込めて、帆栞(ほのか)と名付けた長女は、先天性の心臓病と無脾症を患って誕生した。 私の体は妊娠しにくいと言われていたので、待望の赤ちゃんだった。 妊娠がわかって、本当に嬉しかったし、幼い頃から「家族愛」に縁遠かったのも手伝って、生まれてくる命が愛おしくてたまらなかった。 歳の離れた主人も、とても喜んでくれて、ちょっと大袈裟だけど、毎回妊婦検診に付き添ってくれた。 妊娠三ヶ月になるころ、いつもの様に主人と二人で検診に行った時 エコーに写っている、まだヒトの形にすらなっていない赤ちゃんの姿を観て、 「可愛いね」 なんて、早くも親バカっぷりを発揮してはしゃいでいた私たちに、主治医が深いため息をついた…。 「落ち着いて聞いてくださいね。 この胎児にはもしかしたら何らかの先天異常があるかもしれないので、羊水検査する事をお勧めします。」 そう告げると、淡々と説明を始めた。 どうやら、胎児の首に浮腫があるとのことで、もちろん、素人の私たちが見てもわけがわからないようなエコー画像だが、何となくいびつに膨らんでいるような気もした…。 医師は、99%ダウン症であろうと言った。 そして、1%は手術で治る可能性のある心疾患だろう…と。 わずかな望みで、何も異常がないことが無くはない…。とも諭され、わけがわからぬまま羊水を少量抜き取る検査をした。 例えなんらかの障害があったとしても、大切な赤ちゃんには代わりが無い。 でも、実際問題、育児に相当な苦労が伴うのが必須。 だからこそ、検査の結果が出るまでの二週間の間、疾患があった時、堕胎するか否かを夫婦で話し合ってくれと、障害児をもつ親達が主催しているサークルのパンフレットなどを手渡された…。 頭の中が真っ白になるって、こういうことなんだなぁって実感した。 「障害児」という言葉に偏見が有ったわけではない。 だが、自分の子供が障害をもって生まれようとしているとは、想像すらしていないから、たった二週間で、どうするかなんて、簡単に答えが出るわけがない。
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