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俺達は彼女のことを「クロカミさん」と呼んでいた。
長く艶やかな、見ていると吸い込まれそうなほど深い黒髪。
それが透き通るような白い肌によく映えていた。
容姿端麗、才色兼備。
どんな言葉を並べてもクロカミさんの前では貧相に聞こえる気がした。
近寄り難い威圧感、常に表情を変えない人形のような顔が余計に彼女を美しく、高貴に際立てる。
だがそんなクロカミさんにも男がいた。
幼稚園の頃からの幼なじみらしい。
そいつと一緒にいる姿を度々見掛けたが、とても付き合っているようには見えなかった。
そもそもそいつとクロカミさんとは不釣り合いだった。
特に格好いいわけでもなく、頭のいいわけでもなく、至って普通の男子高校生だ。
しかし、そいつは先月死んだ。
通り魔に殺されたらしい。
彼女はそれからも変わらない。
ただ、それ以来クロカミさんの声を聞いた人は誰もいない。
授業中に教師にあてられても一切答えなかった。
事件から一ヶ月半後、俺なんかがクロカミさんに声をかけられるなんて、誰が想像できただろう。
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