俺とクロカミさん

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薄暗い廊下。 日が暮れ、部活の終わった生徒達が帰る頃、俺は教室に忘れた書きかけのレポートを取りに急いでいた。 下の正面玄関で同じ軽音楽部の総也が待っている。 教室の扉に手を掛け、勢い良く横に引く。 室内に一歩踏み出し、ふと人の気配を感じた。 教室の真ん中、机と机の間に、人が立っていた。 長い髪を腰まで垂らした後ろ姿……クロカミさんだ。 俺は急に恥ずかしくなり、うつむき気味に机に向かう。 机の中にあったレポートを抜き出し急いで出て行こうとすると、聞き慣れない声が耳に入った。 顔を上げ、クロカミさんを見る。 振り返りこっちを見ているクロカミさん。 教室を見渡しても、俺と彼女しかいない。 今度ははっきりと、彼女が口を開けるのが見えた。 「聞いているの?木下和巳」
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