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死の宣告から二千九百九十八日二十時間。
僕が待ち合わせ場所に着くより先に、彼女はベンチに座って本を読んでいた。
近づくと彼女は本を鞄にしまい僕の方を見る。
「おはよう。いい天気ね」
表情一つ変えずに言う姿はもう慣れていたが、彼女が挨拶をしたのには驚いた。
良い天気と言いながら彼女の手にはしっかりと赤い傘が握られている。
「そうだな」
彼女は立ち上がり近くのファーストフードに向かって歩く。
僕も後ろから着いていく。
軽く昼を済ませたところで僕は問い掛ける。
「今日は何処に行くんだい?」
彼女はぼそりと「海」と言った。
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