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電車から降りた途端潮の匂いが鼻先を掠める。
僕らは堤防沿いを歩いて、彼女が立ち止まったところで腰を下ろした。
彼女はただ、海を見つめている。
深い青や緑の色をした海は僕の心を癒してくれた。
穏やかな波は岩にあたっては消え、また次の波がやってくる。
繰り返しやってくる波を見続け、ふと彼女の方を向いた。
彼女も視線に気付きこちらを向く。
「今日くらい恋人らしくしない?」
僕は言った。
「どういう風に?」
彼女は無表情のまま問い掛けてくる。
「なんかこう……話をしたり、さ。
好きって言ってみたり」
僕もよくわからないが、彼女と今まで恋人らしい事はしたことがなかった。
今日のように二人で出かけることはあっても、デートと言うよりは僕が彼女についていく形だった。
彼女は謙虚であり強引だった。
「あなたは私が好き?」
彼女はさらに問い掛けてきた。
「あぁ、好きだよ」
僕はためらいなく答えた。
「それは恋愛感情なのかしら」
「さぁ、僕にもわからない。
恋愛感情よりも、友情よりも、もっと深い感情だと思う」
僕ら視線を逸らさず見つめ合い、自然と唇を重ねた。
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