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目が冷めると温かい膝はなく、冷たいコンクリートがボクの仄かな体温さえ奪っていく。幸い最も冷たい雨だけはしのげているが、もはやコンクリートの役割はそれだけでしかない。昼間だというのにすっかり姿を隠している太陽を見上げて、ボクは深いため息をつく。
さっきの笑顔の主は誰だっただろう。もはや正確な名前は忘れてしまった。ただ…膝の温もりと笑顔だけは、たまに見る夢で思い出すことができる。
そうだ。彼はボクのご主人さま…突然いなくなったかけがえのない人。いつも、どこに行くにも常に一緒だった。旅行に行くときも、仕事先にさえついて行っていた。そんな彼が亡くなったのは、もう1年も前のことだ。
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