世界が終わる場所で

2/41
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
僕はその夜、ハチ公前のスクランブル交差点を見下ろす渋谷駅2Fのコンコースから、クリスマスのイルミネーションに彩られた街を眺めていた。 スクランブル交差点の信号が青に変わると、黒い人の群れが四方から交差点の真ん中に押し寄せ、溶け合い、すれ違っていった。 それは混沌としながらも、恐ろしく秩序だっていて、まるでなにかのコンピューターシュミレーションを見ているようだった。 僕は思った。 この交差点で、今までにどれほどの愛が育まれ、そして失われていったのだろうかと。 そしてすぐにまた、僕は思った。 きっと、失われた愛のほうが多かっただろう。 愛は、交差点のような場所で育まれるべきではない。 ひととひとは、もっと素敵で特別な場所で出会うべきなのだ、と。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!