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僕はその夜、ハチ公前のスクランブル交差点を見下ろす渋谷駅2Fのコンコースから、クリスマスのイルミネーションに彩られた街を眺めていた。
スクランブル交差点の信号が青に変わると、黒い人の群れが四方から交差点の真ん中に押し寄せ、溶け合い、すれ違っていった。
それは混沌としながらも、恐ろしく秩序だっていて、まるでなにかのコンピューターシュミレーションを見ているようだった。
僕は思った。
この交差点で、今までにどれほどの愛が育まれ、そして失われていったのだろうかと。
そしてすぐにまた、僕は思った。
きっと、失われた愛のほうが多かっただろう。
愛は、交差点のような場所で育まれるべきではない。
ひととひとは、もっと素敵で特別な場所で出会うべきなのだ、と。
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