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ザァっと側の木々が風に揺られた。
「勇ちゃん!何か食べる?ノド渇いてない?」
「あはは……。 大丈夫ですよ。 それより、もうすぐ始まりますよ」
明の母親は、俗に言う過保護だ。
だが、勇にはそれが心地良かった。
勇は、母親がいない家庭で育った。
しかし、もし自分に母親がいればこんな感じなのかなと思うと、幸せな気持ちになれた。
「あっ!勇ちゃん!明出てきたわよ! なんか、髪の毛が長くて女の子みたいね……」
「本人は、嫌みたいですよ、そうゆう風に言われるの」
「あら!そうなの?
だったら、切ればいいのにねぇ~
ホント、男の子じゃなくて、女の子育ててるみたいなのよね」
そんな事を言いながらも、表情は幸せそうだった。
「明は顔とか昔から変わらないですよね……。
可愛いまんまじゃないですか!?」
「そうね!良かったら、内の子嫁にあげるわよ!」
「あはは! じゃあ、いただきます!」
「そういえば、明とはずいぶん前から仲良しよね?」
「はい。小学校に入ったばっかりの頃でしたから」
――――――――――――――
明は小学生になったが、それまで同年代の人間とふれ合う機会のない明にとって毎日が未知だった。
そんな時だった、明が同級生の男子に名前の事でいじめられ始めていた。
「お前の名前女みたいだな!」
「あかりちゃ~ん!
スカートはかないのかな~?」
そんな事を言われてもどうすればいいかわからない明はオロオロしていた。
その時だった。
「あんた達!バカじゃないの?
な~にこんなカワイイ子いじめてんのよ!」
勇だった。
勇は、正義感が強くて見てみぬフリはできなかった。
「うるせ~よ男女!」
「そ~だよ!いい子ぶんなよ!」
ブチッ!
ホントにそう聞こえたような気がした。
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