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ドンッ!
鈍い音が教室に響いた。
勇がいじめていた男子の1人を蹴り飛ばした音だった。
「……いってぇよ!」
その男子は、しりもちをついたまま勇を睨みつけた。
教室が静まりかえる……。
ふっ……と男子と勇の間に誰かが立ちふさがった。
男子は、その小さな背中に見覚えがあった。
それは、ついさっきまで罵声をあびせていた背中だったから。
勇は、怒っていた表情から驚いた表情に変わっている。
「ご、」
「ご?」
勇は明が何を言いたいかわからず、繰り返すように聞いた。
その場にいる全員が次の言葉を待った……。
「ご、ごめんなさい!」
「は?」
みんなその言葉の意味がわからず唖然としている。
その中で勇だけが明に話しかけた。
「なんであんたが謝るのよ!
あんた、悪い事してないじゃん」
「いや、あの……僕がケンカの原因だから……」
「いや、あのね、私が怒ってるのはね……」
「悪かったよ!
ごめんな。からかったりして……。
もう言わないからさ……。
許してくれないかな?」
勇に蹴られた男子が明に謝ったのを見て、今までいじめていた男子も次々と謝り出した。
勇はそれを、満足げに見つめていた。
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