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30分後には、みんな普通に戻っていたが勇だけが険(けわ)しい顔をしていた。
「……いっ! あちゃ~足首ひねっちゃったか~。
いったいけど、いっか!
……ん?」
視線を感じて、後ろを見ると明がじっ、と見ていた。
「どした?」
ニコッと笑いかけながら勇が聞いた。
「いや、あの……足、もしかして痛いんじゃないかなって思って……」
明は視線を下に下げたまま、たどたどしく答えた。
「あ、あぁ。
わかったんだ。大丈夫だよ。
あんまり痛くないし」
ホントは、とても痛かったが勇は強がってみせた。
しかし、明は納得した顔をせずに、視線を泳がせながら、自分の頭の中の考えを必死に言葉にしようとしていた。
「いや、えと、さっき、イスに座った時にすごく痛そうだったから……さ。
一緒に保健室行こ?」
問いかけながら、自然と明は笑顔になっていた。
勇は、一瞬目を奪われたが、すぐに我に返ってまた断った。
だが、明も退かずにまた誘った。
明と勇の、行く行かないの問答は、思わぬところでけりがついた。
「お前達、ちょっとうるさいぞ!」
「先生!」
明が、間髪を入れずに呼んだ。
担任が聞こうとすると、明は一方的に話し始めた。「杉乃さんが、体調悪そうなので保健室に連れて行ってきます!」
今まで、ぼそぼそとしゃべっていた明の、思ってもみない大声で担任も驚きながら許可を出した。
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