第一章:日が向かう先は希望

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 その日の放課後。 いつも通り音楽室を借りての、バイオリンの練習がおわり、明が片付けを始めようとしていた時 「へぇ~、けっこう上手いじゃん!」 勇が入り口で微笑みながら立っていた。 「そんな事ないよ……。 先生に言われた通りに弾けないんだ……。」 眉尻(まゆじり)を下げながら言った。 「ふ~ん……。ちょっとは自信持ってもいいと思うけどな」 「ムリだよ……。 僕の周りにはもっと上手い人ばっかりだから……」 「はぁ……あんたさぁ~なんでそんなに暗いわけ? イライラするんだけど?」 「ゴメン……。 僕、友達いないんだ。 ……だから、どうしたらいいかわかんなくって」 「何言ってんの?もう、私達友達じゃん!」 それを聞いて明は一瞬、きょとんとした後 「ホントに? ありがとう! 僕の一番最初の友達だね!」 優しい笑顔で笑った。 その笑顔はとても輝いていて、その後ろからは夕暮れ特有のオレンジの優しい光がさしていた、 (あぁ、この子はこんな風に笑うんだな) と心が癒されるような感覚になった。
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