prologue:割れた窓、塞がらない俺の口

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「疲れたー……」 フラリ、フラリと危なっかしい足取りで、俺は夜の町を徘徊する。 大学の仲間に思いっきり飲まされた帰り道。 これでも酒には強い方なので、なんとか1人で帰宅しているが、それでもやはり足下はふらつく。 頬は赤く上気し、自分ではわからないが恐らく吐く息も酒臭いのだろう。 傍目からすれば『なにこの酔っ払い。酒臭いんですけど。警察呼びますよ?』ってなもんである。 「う……もう一時か」 俺は腕時計を焦点の定まらない瞳で睨みつけると、ため息にも似た声を漏らした。 「……車があればなあ」 もちろん飲酒運転は禁止なのだが、今の俺はそこまで頭が回らない。ついでに呂律も回らない。 先日とったばかりの運転免許証を取り出し、ボーっと見つめる。 【一ノ瀬 玲 (いちのせ れい) 20歳 男 生年月日 9月19日】 そこには俺のプロフィールがつらつらと綴られていた。 まあ今更自分のプロフィール見つめ直しても何にもならないんだけど。 あれですか俺。自分探しですか。 「さっさと帰って寝よう……」 誰に言うでもなく独りそう呟くと、俺は1人暮らし先のボロアパートに向けて歩を進めるのであった。
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