prologue:割れた窓、塞がらない俺の口

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「ただいまー」 アパートについた俺は自室の扉を開きながら、誰もいない部屋に向かって帰宅の挨拶。 空しく響く俺の声。 オーケー。今日もいい感じに寂しいぞ! 「……寝よう」 駄目だ。 夜は必要以上にセンチになってしまう。 もういい加減慣れてきているとはいえ、やはり夜中に独りぼっちと言うのは虚しいもの。 ましてや挨拶をしておきながら、その挨拶が返ってこないと言うのは想像以上の精神的ダメージを負うものなのだ。 「はぁ……」 溜め息一つ。 俺はさっさと布団を敷くと、『一晩を共に過ごしてくれる彼女でもいたらなあ』なんて妄想しつつ、風呂にも入らず眠りにつくことにした。 「おやすみー」 またしても空しく響く俺の声。 「……ぐすん」 ……学習しようぜ、俺。 「……」 ――と。 「……ん?」 ちょうど俺が布団に横になった、その時だった。 「……なあッ!?」 突然、強い光が部屋に溢れ、俺の目蓋の裏を赤く染める。 何事かと思って部屋を見渡してみれば、まさに『ピカー』とかいう擬音でも出しそうな位の、完膚なきまでに光の球そのものが、部屋の中心に浮かんでいたのだ。 やばい。俺びっくり。 普通なら現実にはありえない光景に慌てふためくものだが、あまりにびっくりしすぎた俺が最初に思ったことは一つ。 めっちゃ眩しい。 それだけだった。 ていうか、眩しくて寝れない。 太陽も『流石にあいつの眩しさには負けるよ』って言いそうなくらい明るさ満点のこいつは、限りなく俺にとって安眠妨害そのものだった。 「……お?」 光が現れてから数秒。 徐々にそれが収縮しだし、光が明るさを失っていく。 それと入れ替わるようにして、そこに一つの、いや、1人のシルエットが浮かび上がってきた。 「……」 開いた口がふさがらない。 光が完全に消えた頃、部屋の中心には―― 「なんだ、ここは。豚小屋か」 「いきなり失礼ですね、アンタッ!」 1人の、高校生くらいの少女がたっていたからだ。image=180807655.jpg
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