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今、目の前で起きていることがまるで理解出来ない。
黒い長髪に、女性にしては高めの身長に、モデル体系と言っても差し支えの無いその身体。
背中だけ見れば日本人に見えないことも無いが、彼女の翠色のその瞳がジャパニーズでないことを教えている。
そんな、その見目形だけとっても、日本のしがない大学生のボロアパートにいるには不釣合いな少女が、光と共に急に現れたのだ。
こんなことが現実に起こりうるだろうか?
否、起こるはずがない。
俺は布団の上で腰を抜かしたまま、どうすればいいのかわからず――
「……それにしても臭いな」
「うるせえよ!何なんだお前!」
とりあえずキレていた。
あまりの急展開に脳の処理が追いつかなかった俺は、目の前でいきなり失礼極まりないことをのたまう少女に文句を付けることで、この状況を理解するのを放棄したのである。
「ふむ……」
現れた少女は不機嫌そうに部屋を見渡した後、小さくため息をもらし、ついに俺の方へ視線を向けた。
「なっ……!人が住んでいたのか」
「喧嘩売ってる?ねえ、喧嘩売ってるよね?買うよ、俺?」
お前は今の今まで俺の存在に気づかなかったと申すか。
「……参ったな。まさか人家に転移してしまうとは」
「……は?」
転移?いったい何の話だ?
「……しかも、それだけでも運が悪いというのに……」
少女は『あーあ』と言った感じに右手で顔を覆い、うなだれながら呟いた。
「転移早々、場所が割れてしまうとは」
「はい?」
その時だった。突如、真後ろでガラスの割れる音。
「え!?」
驚いて振り返ると案の定、窓が割れていた。
「のおぉぉおぉおっ!?」
深夜、家に帰ったらいきなり光の玉が現れて、しかもそこから少女が出てきて、その上、出てきて早々部屋を罵倒されて、しまいにはウィンドウがブレイクですか?
ふざけんな。
どんだけ俺は不幸に恵まれてるんだよ。
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